2013年1月7日星期一

【本の話をしよう】誰かから見た世界を体験する 柴崎有香

【本の話をしよう】誰かから見た世界を体験する 柴崎有香
スポーツにまったく関心がない友人は、野球の攻撃と守備を逆だと思っていた。つまり、ピッチャーのボールをキャッチャーが受けとると点が入るのであって、バッターはそれを邪魔している、と。…な、なるほど。 そういうのを聞くと、羨ましくなる。わたしはルールを知っていて、野球をそんなふうに見たことがないし、別の見方はなかなかできない。たとえば同じ時、場所で、同じ出来事を経験したとして、わたしと誰かは、同じものを見ていたのだろうか、とよく考える。「現実」というと一つしかない確かなもののように思えるが、たとえば、文化の違いや、年齢や、そのときの気分、信じているもの等々によって、それぞれ見えているものは違う。そして、自分以外の誰かにとって世界がどう見えているかを体験することは、難しい。 ■真実と幻影の間 でも、小説がある。自分ではない誰かの頭の中、誰かから見た世界を体験できるのが、小説の楽しみの一つだと思う。 まず思い出すのは『モレルの発明』。博物館の廃墟がある無人島に辿り着いた語り手の前に、ある日突然楽しげな男女の一団が現れる。語り手は身を潜めて彼らを観察するうちに、丘で夕陽を眺めるフォスティーヌを恋するようになる。< 前のページ12345次のページ >
fdhsjfhdjksfdsfjjRelated articles:

没有评论:

发表评论